2013/10/07(月)
きのこフォーレの紹介きのこ担当の保坂です。先月の末は約1週間ほど、広島県廿日市市の「もみのき森林公園」で行われた「きのこフォーレ」に参加してきました。今日はその報告です。
とは言っても、そもそも「フォーレ」という言葉を聞いたことがある人のほうが少ないでしょう。植物を研究している人の中でも、この言葉を使う人はあまりいません。なぜだかわかりませんが、菌類、特にきのこの採集会のことを昔から「フォーレ」と呼ぶ習慣があるのです。
フォーレ、というのは元々英語でforayという語から来ています。意味としてはなんと、「略奪する」とか「襲撃する」とか、かなり物騒な印象です。しかし、きのこフォーレに実際に参加したことがある人は、この意味に納得してしまうかもしれません。
まずは宿泊先のホテル前に早朝全員が集合します。参加者の総数はなんと120名以上!これだけの人数がいっせいに森にきのこを求めて繰り出すのです。まさに襲撃といえるかもしれません。これだけの人数がいると、どんなアクシデントが起こるとも限りません。特に熊に注意して、熊鈴をつけるように、司会者から注意を受けてから出発します。
森の中はいたって平和です。実はフォーレの期間中はしばらく雨が降っていない状態で、森も乾き気味でした。やる気満々で出発した科博のチームも、しばらくするときのこの少なさにやや意気消沈。ある程度のきのこが集まった段階で、早々に引き上げることにしたのです。
しかしそこはさすが「襲撃会」。鑑定会会場となった体育館では、120人強が採集した、合計1000点以上のきのこが並ぶことになりました。
これらは分類群ごとに並べられ、採集場所や採集者、そして種名などのデータを記入した用紙とともに、整然と配置されます。
そしてこの会最大の特徴が、採集したきのこをきちんと写真撮影し、DNA用のサンプルを採取し、それらを乾燥標本にすることです。
そうすることにより、ほんの短期間の採集会ではありますが、その時に大人数で一気に採集したきのこの種リストを作ることができ、しかもそのリストが標本およびDNAという証拠に基づいた、より信頼性の高いものになるのです。
大学生・大学院生らに手伝ってもらいながら、夜の11時近くにようやく作業が終わったときは、普段どんなに採集しても1台の乾燥機で間に合うところ、合計5台の乾燥機にいっぱいの量のきのこが標本となったのでした。
このフォーレは、毎年日本菌学会と日本全国のきのこ同好会の共催で行われています。来年は宮城県です。また大勢の参加者がいっしょに作業することで、500点近いきのこを研究用に得ることができることでしょう。各研究者による地道な採集も重要ですが、大人数で一気に大量の標本を確保する、このフォーレのような機会は、きのこの多様性を把握する上で非常に重要なものなのです。