2024/7/22(月)
海辺の水草がつなげる環境「岩礁」
はじめまして、水草展初参加の国立科学博物館標本資料センターの伊藤です。
普段は筑波実験植物園の隣にある科博筑波地区の標本資料センターというところでお仕事をしているのですが、実は私は海の水草、海草を対象とした駆け出しの研究者でもあります。
そんなことから、今年の水草展では海草研究者としてお手伝いをしていますので、今回は私の研究対象である海草がつくる環境のひとつ、「岩礁」を紹介いたします!
実は海草は2015年の水草展「海に生きる水草」で主役になったこともあるので、水草展マニアの方はご存知かもしれません。
(水草展2015のブログです、興味のある方はご覧ください)
「岩礁」って名前の通り岩だらけなのに、そんなところに海草がいるの?と疑問に思いますが、実は海草の中には海中の岩に根を張って荒波に耐えながら生活する種がいるのです!
日本からはスガモとエビアマモの2種(どちらもアマモ科スガモ属)が知られていて、こんな風に海藻に囲まれながら、ごつごつした岩にしがみつくように生えています。
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中心付近の緑色が岩礁性海草のエビアマモ
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スガモ
これら岩礁の海草がどれくらい荒波にもまれながら生活しているかというとこんな感じです。
荒波にもまれる海草
激しい波に耐える海草
撮影していた私も波をかぶってびちゃびちゃです。
岩礁の調査では強い波に身体ごと吹っ飛ばされかけることは何度もあって、そのたびにこの波に耐えられる海草の頑丈さに驚きを覚えます。
水草展の展示パネルでは、岩礁性の海草がどうやって岩にくっついて、激しい波に耐えているかの仕組みや、我々のチームが行っている研究の最新情報など、いろんな側面で「岩礁」を解説していきますので、ぜひ会場にてご覧ください!
さて、今回の水草展テーマは「つながり」ということで、この岩礁の海草の根元をそーっと覗いてみると…
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ガサガサ、もぞもぞ、にょろにょろ、とたくさんの生き物がいます!
実は岩礁の海草が岩に根を張り、先ほど紹介した強い波を抑えることで、ごつごつした岩場だった環境に砂が溜まり、いろんな生き物が住めるようになるのです。
今回の水草展では、どんな生き物が海草の根元に生息するのか、皆さんに体験していただけるように「海草の根元に生息する生物の観察コーナー」を準備いたしました。
岩礁の生物観察体験コーナーはおそらく日本、もしかすると世界初の試みで、実際どんな生き物が、何種類、何匹出てくるかはやってみてのお楽しみとなります!
実はどんな結果になるか担当の私も想像つきませんが、貴重な体験になること間違いなしですので、ぜひ水草展会場でお試しください!