水草展2024~水草がつなげる世界~国立科学博物館 筑波実験植物園

2024年8/8日(木)~8/18日(日) ※期間中休園なし

※諸事情により、イベント内容が変更または中止になる場合がございます。最新情報はホームページでご確認ください

2024/7/17(水)

水草と文化

水草展に参加しています、筑波大学大学院の福田です!
国立科学博物館の特別研究生として水草の研究をしています。
本日は、「人とつながる水草」という観点から、文化利用される水草についてお話ししたいと思います。

みなさまは、身近な水草と聞いて思いつくものはあるでしょうか?
園芸用のスイレンや、小学校で飼育したメダカの水槽に入っていたコカナダモ…あるいは近所の川に生育していた水草など、生きている状態の水草を思い浮かべた方は少なくないかもしれません。
しかし、水草はものづくりの材料として、繊維として、ときに食べ物としても利用されています。

有名なものを挙げると、「パピルス」があります。
古代エジプトの紙として有名なパピルスですが、これは「カミガヤツリ」という水草からできています。
水草の茎の繊維を平たくして重ね、紙のようにしています。

カミガヤツリ(パピルス)

また、近年雑貨屋などでこのようなカゴを見かける機会が多くあります。

ウォーターヒヤシンス(ホテイアオイ)の茎で編まれたカゴ

実際にお持ちの方もいるのではないかと思いますが、これは「ウォーターヒヤシンス」と呼ばれる水草から作られています。
ウォーターヒヤシンスは「ホテイアオイ」とも呼ばれ、水に浮かべて栽培できることから睡蓮鉢などに入れられているのを見かけます。

ウォーターヒヤシンス(ホテイアオイ)の花

この水草の茎に当たる部分を乾かして編んだものがこのようなカゴになるのです。

一方で、本種は要注意外来生物に指定されており、取り扱いには注意が必要です。
名前に「ヒヤシンス」とある通り綺麗な花を咲かせる本種は、観賞用に南米から日本に持ち込まれたと考えられており、「人がつなげてしまった」水草のひとつです(ちなみにヒヤシンスの仲間ではありません)。
本種は繁殖力が強く、1株でもあれば湖沼の水面を覆い尽くすほど増えてしまうことがあります。水面が覆われてしまうと、水面下で生きている水草に光が当たらなくなって枯れてしまったり、漁業用の船の通行を妨げたりするという問題が生じます。
本種は寒さに弱く、関東ではほとんどは冬に枯れてしまうのですが、生き残った数株から復活することができるので一度繁殖すると駆除が難しい種のひとつとなっています。
今後、地球温暖化に伴い暖冬になった場合、本種が環境に与える影響はますます大きくなっていくでしょう。
メダカの産卵床や水質向上などの役割を果たすホテイアオイですが、栽培するときは野生環境に出さないようにすることが大切です。

ここまで海外の事例を見てきましたが、日本でも水草は文化的に利用されてきました。
家庭の食卓に上がることもある「ジュンサイ」はハゴロモモ科の水草で、春から夏頃の若芽を摘み取って食べます。
ジュンサイは秋田県が生産量一位を誇っており、今でも酢の物や汁物の具などとして食べられていますが、実は都道府県単位で見ると絶滅危惧種や絶滅種に指定されている場合も多い貴重な在来種です。

食用水草のジュンサイ(ハゴロモモ科)

仏事や神事で使用されるゴザも、材料はイネ科の水草「マコモ」とされています。古事記や日本書紀にも登場し、古くから食用や薬用として利用された種であったようです。
水が豊富で古くから稲作が盛んであった日本では、水草が身近な存在であったことが伺えます。

マコモ(イネ科の水草)

ここでご紹介した水草の利用はほんの一例に過ぎません。水草展では世界中の水草を利用した製品を集めて展示していますので、是非ご覧になってください。
水草から作った薬、水草を使ったアクセサリーなど、きっと驚くものに出会えるはずです!

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