2023/10/13(金)
日本のきのこ学をつくってきた巨人たち その1
みなさんこんにちは。きのこ担当の保坂です。
前回のブログでミャンマーの調査についてお伝えして以来、だいぶ間が空いてしまいました。もちろん、きのこ展のことを忘れていたわけではありません。むしろきのこ展の準備に追われ、ブログまで手が回らなかった、というのが正確なところです。おかげさまできのこ展の準備も順調に進行中。残り開幕にむけて、ブログも積極的にアップしていく予定です。
前回から進んだことのひとつとしては、「きのこ画コンテスト(きのコン)」の受賞作品が決まりました!受賞者には順次連絡が行っていると思います。今回も力作ばかり。ぜひ会場でもお楽しみください。表彰式はきのこ展最終日、10/29(日)です。
そして、これからのブログでは、今回のきのこ展で紹介する、「日本のきのこ学をつくってきた巨人たち」を一人ずつ解説していきます。ネタバレにならない程度に小出しにしていきますので、もっと知りたい方はぜひ会場まで!
今回紹介するのは小林義雄(こばやし よしお)です。1907年に熊本で生まれ、1940年に冬虫夏草の研究で博士号を取得します。その後、満州国立博物館などのポストを経て、文部省国立科学博物館(現・国立科学博物館)の植物研究部に着任するのですが、つまり、僕(保坂)の仕事場の大先輩、ということになるわけです。
小林博士はとてつもない種数の冬虫夏草を新種発表したことで有名なのですが、今回紹介したいのは、トリュフ型のきのこである「シンジュタケ」。小林が1936年に小笠原諸島父島で採集した標本を基に、1937年に新種記載されました。直径1センチにも満たない小型のきのこですが、まん丸でつるっと白い様子はまさに真珠のよう。
ながらく正体が不明のきのこでしたが、最近の調査で父島・母島のほぼ全域から大量に採集することができ、進化的位置も明らかになってきました。
断面をみるとこんな感じ。
小林義雄を一言で表現するならば、まさに「博覧強記」。それがなぜなのかは会場で確認してください。ここでは小林が多数の菌類関係の論文・書籍を出版したことに加え、「アダムとイブ」(1990年)とか「世界の影絵芝居と人形等」(1988年)など、全く菌学者らしからぬ本も多数出版した事実だけ紹介しておきたいと思います。