2014/12/21(日)

高校生たちの取り組み

みなさんこんにちは、地学研究部の矢部です。矢部先生

植物化石展の第一会場では、化石を通じて植物の背後に隠れた歴史を紹介する、そんな展示をオムニバス的に展開しています。かつて行われた研究に基づいたもの、現在進行形のものなど、いろいろな段階の研究事例があるのですが、今日は高校生たちがとりくんでいるホットな話題の一つを紹介しましょう。

第一会場の出口ちかくに「タケ・ササ」という小さな展示コーナーがあります。ここでは神奈川県立横浜緑ケ丘高校地学部の生徒たちが取り組んでいる研究を紹介しています。今から数年前、地学部の生徒のひとりが相模原市の川原に露出している200-300万年前の地層中に変わった化石を見つけました。当初は骨かと思ったそうですが、調べたところ、中空で、維管束と呼ばれる管がバラバラにあることから、タケだと言うことに気づいたのだそうです。展示パネルにもあるように、タケの茎(稈:かんといいます)の化石はとても珍しく、私が相談を受けたときにも比較材料がなく困りました。そこで、地学部の生徒たちは、指導する先生と一緒に、現生のタケの稈をしらみつぶしに調べ、とうとうこの化石がマダケないしはそれに非常に近いものだという結論にいたったのです。硬い竹の稈の切片を作ったり、大学にでかけて電子顕微鏡で撮影を行ったりと、よくやったものだなと感心しています。

現在日本に生えているマダケは中国から持ち込まれたというのが一般的な見解です。今回の化石の研究結果は、マダケ(ないしはそれに近い種類)がかつて日本に自生していた可能性を示すもので、とても意義深いものだと思います。日本のマダケが当時からずっと生き残ってきたのか、それともメタセコイアやイチョウのようにある時点で絶滅したのかはまだ不明ですが、こうした若い力の取り組みによって、今後も植物の歴史が解明されていくことでしょう。

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