2014/12/5(金)
みなさんこんにちは、地学研究部の矢部です。
いよいよ明日から植物化石展が始まります。
「植物化石展」のポスターを飾るのは“ユリノキ”という北米産の植物です。ユニークな葉の形から「ハンテンボク」とも呼ばれるこの植物は街路樹によく使われているので、見覚えのある人も多いのではないでしょうか?
チューリップ(ユリ科)によく似た花を付けるために、Liriodendron(Lirio=ユリのような + dendron=木)という学名が付けられています。まさに“ユリノキ”です。
さて、ユリノキの緑の葉と一緒に写っている、ポスターのもう一方の主役はというと、ハンテンのような形をしていて、きっとだれがみてもユリノキだ、とわかることでしょう。これはユリノキに近い化石種で、Liriodendron honsyuensisと名付けられています。
この化石がどこでみつかったかというと、鳥取県鳥取市のおよそ6百万年前の地層、つまり、正真正銘、日本産の化石というわけです。 ユリノキの仲間は世界に2種あり、1種が北米東部に、もう1種が中国南部に分布しています。同じ種やごく近縁な種類が大陸を隔てて分布することをちょっと難しい言葉で「隔離分布(かくりぶんぷ)」と呼んでいます。ユリノキは典型的な隔離分布をする植物です。2種が近縁な種だとすると、どうしてこのように分布が分かれてしまったのでしょうか?
日本でユリノキによく似た化石が見つかるのと同じように、少し前にはユリノキが今よりも広い範囲に分布していました。それが地域的に絶滅するなどして、今の分布ができているというわけです。
ユリノキは日本からは絶滅してしまった例ですが、逆に日本にだけ生き残ったものも知られています。たとえば日本固有種のコウヤマキなどがその例です。絶滅の理由やタイミングについてはまだよくわかっていないことが多いのですが、今の植物の分布がこうした長い地球の歴史の中でできていることを、化石を通じて実感していただく、「植物化石展」ではそんな展示コーナーも用意しています。