2014/11/26(水)

化石の定義と植物遺体

みなさんこんにちは、地学研究部の矢部です。矢部先生

化石は文字通り石に変わったものだというイメージを皆さん持っているのではないでしょうか?化石とは、昔の生物の体や生活の痕(足跡や巣穴など)が、自然の作用で地層に保存されたものを言います。自然にというのがポイントで、人がつくった貝塚などは化石とは呼びません。この“定義”からもわかるように、化石とは、決して硬く石のようになっていなくともいいんです。

「これ、本当に化石なの?」なんて声が聞こえてきそうな例を紹介しましょう。

花室川で見つかったトウヒの仲間のマツボックリ

筑波実験植物園の東を花室川という小さな川が流れています。河岸には今から2−5万年くらい前にたまった地層が現れていて、ナウマンゾウやバイソン、シカなどの化石が見つかっています。2−5万年くらい前はちょうど氷河期と呼ばれる寒い時代で、中でもとくに2−3万年くらい前が一番寒かったことがわかっています。最近、ある研究グループがこの地層の中に含まれる植物の化石を調べたところ、トウヒの仲間やコメツガ、カラマツなど、今のつくばには全く生えていない植物がたくさん含まれていることがわかりました。

今回の展示では、花室川からみつかったマツボックリやタネ、木の幹などの化石も展示します。化石は地層から完全に取り出されていて、色こそ黒いものの、まるで現代のもののようです。多少ひしゃげたりしている場合もあるのですが、例えばマツボックリであれば、鱗片を一枚ずつはがして中のタネを取り出す、なんてことも可能です。

植物化石研究者の間では、このような生々しい化石を“植物遺体”と呼んでいます。新しい時代の地層に多いのですが、古いところでは、白亜紀の地層からも見つかる場合が知られています。こんな、ちょっと変わった化石を見ながら、自分の住んでいる地域が2−3万年前にどんな様子だったか、想像を膨らませてみてください。

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