2021/7/27(火)
オロンティウム―旅立ちの準備―
こんにちは。登録室のuです。
植物園の入口からプロムナードを抜けた「中央広場」の水辺では、房状になった丸い実がごろごろと目立っています。この実をつけているのはサトイモ科のオロンティウム・アクアティクム。サトイモ科の中では原始的なグループに属し、ミズバショウに近いとのことです。植物園では早春から初夏にかけて、棒状に集まった黄色い花を咲かせます。花序は黄色、軸は白で、花の時期は黄色と白のツートンカラーと葉の明るい緑があいまって独特の雰囲気を醸し出します(2014年4月撮影)。
その花が実を結び、重そうに頭を垂れています。こんなにたくさんの実は初めて見た気がします。
同僚のTさんと「この実はこれからどうなるんだろう?」と言いながら眺めていると、房から離れて沈んでいる実がちらほら。さらにすらっと細長い葉のようなものも!もう芽が出てる?いや、別の水草?じっと見てみると、やはりどれもオロンティウムの丸い実(種子)から出ています。すごい生命力です!
水草展リーダー田中研究員の『水草を科学する』を開いてみると、「オロンティウムの種子は水によく浮き、流れに乗って移動する。浮いているうちから発芽するので、土に着くとすぐに成長を始められる」というようなことが書かれていました。
今回の水草展のサブタイトルは「旅する水草」。いろいろな意味合いが込められたテーマですが、水草がどんなふうに移動するのか、ということもそのひとつ。オロンティウムは「水の流れに乗って旅する水草」なんですね。
本では「筑波実験植物園の池でも、育てたい場所とは別のところに、毎年のように個体が逃げてしまう」と続きます。確かに、水生植物区の端の方でオロンティウムがひょっこり顔を出しているのを見かけることがあります。園内の短い距離とはいえ、水流に乗って「小さな旅」をしたというわけです。残念ながらそこからは取り除かれてしまう運命なのですが…。アメリカの自生地では実際どれほどの距離を移動するのでしょうか?