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2015/9/28(月)

地衣類はどこまで散布される?

植物研究部の大村です。

菌類と藻類の共生体である「地衣類」を研究しています。地衣類は海岸から高山、そして熱帯から極域まで地球の陸上に広く分布しています。したがって、研究している調査対象地域は、日本、熱帯、高山など限られたものではなく「地球の陸上」なのです。例えば私が専門としているサルオガセ属もやはり熱帯から極域まで分布しているので、それらの地域で調査を行ったり、直接行けないときには採集された標本を調べたりしています。

共生体の地衣類が一体どのようにして増えて分布域を広げているのか?それは大きく分けて二つの方法があります。一つは菌と藻が最初からセットになって飛んでいき適切な環境の下で地衣体になる方法(栄養繁殖)。もう一つは菌が胞子を飛ばし、飛んでいった先で適切な藻類と出会うことが出来たら地衣体になる方法(胞子散布による繁殖)です。

そのような方法で一体地衣類はどこまで散布されるのでしょうか?これまでの研究ではヨーロッパ産の地衣類共生藻と遺伝的に同一であるものが南極でも見つかっているなど、かなり遠くまで地衣類の散布体が飛ばされている可能性が指摘されています。私が関わった共同研究でも日本ではこれまでに報告のなかった地衣類共生藻が降雪の中に見つかるなど、「地衣類の長距離拡散」を支持するデータが得られています。地球上に広く散布されても、降った先で定着できるかどうかは別問題ということなのかもしれません。