2015/8/25(火)
むしばまれる日本の森林とシダ
植物研究部の海老原です。
「絶滅のおそれのある日本の植物が最近どんどん増えています」と書くと、人間が盗掘したり、人が暮らし易くするために山を切り拓いたり、道路やダムを造ったり…というような原因を想像する方が多いかもしれません。
ところが、近年の日本の植物にとっての大きな脅威は人間よりも、むしろ「シカ」です。私の研究材料であるシダ植物は、林の下に生えていて柔らかいものが多いので、シカたちの格好の食料です。シカが新たに分布を拡げたり、個体数が増えたりした地域では、「林床の植物が葉を出す→シカが食べる」を繰り返すうちに、やがて植物は弱って枯れてしまい、林床植物の見当たらない「死の林」に変わっていきます。
なぜ急にシカが増えているのか、元をたどれば人間が原因を作っていることはほぼ確実ですが、原因の究明も対策も十分とはいえない状況下で「死の林」がじわじわと日本列島で拡大しています。