2017/8/22(火)
小笠原諸島のきのこ
皆さんこんにちは。きのこ展担当の保坂です。
今回のブログでは、僕が2009年から毎年調査している小笠原諸島のきのこについて、少しご紹介します。
まずこのきのこ。父島で林に入ると大型の個体がたくさん生えているのを見ることができます。
これは「イボテングタケ」の幼菌。有名な毒きのこで、成長すると高さ30センチ、カサも開くと20センチ以上の大きさになる、大型のきのこです。
さて次はこのきのこ。
最初は、珍しいきのこが採れた、と喜んでいたのですが、よく調べると実はこれも「イボテングタケ」の幼菌。生えるときの気象条件などによって、見かけが大きく変わることがあるようです。
次はヌルヌルのカサが特徴的なこのきのこ。
このきのこは「チチアワタケ」。カサの裏はヒダではなくて、スポンジのように小さい穴(管孔)がたくさんあります。イグチ類と総称されますが、小笠原諸島の父島・母島では一番良く見かけるきのこかもしれません。食用きのことしても知られていますが、あまり人気があるとは言えません。
そしてオレンジ色がきれいなこのきのこ。
これは「アカハツ」という、ベニタケ科チチタケ属のきのこです。新鮮な個体は全体が鮮やかなオレンジ色ですが、傷つけるとオレンジ色の汁(乳液)がしたたり落ちてきます。しかもそれがすぐに青緑色に変色するのです!いかにも毒々しいきのこですが、これも食用にされます。
さて、ここまで3種類の、見た目が大きく異なるきのこを紹介してきましたが、この3種に共通する特徴は何でしょうか?
実は、この3種は全て「外来種」なのです。小笠原諸島は他の大陸や島と遠く離れた海洋島です。これまでどの大陸とも地続きになったことがありません。そして、きのこを研究するうえで面白いのが、小笠原諸島には自生する「外生菌根性樹木」がいない、ということなのです。
外生菌根性樹木、という言葉は難しそうですが、きのこと共生して、きのこの菌糸を通じて土の中の水分やミネラルなどを得ている樹木のことを指します。そしてその関係では、きのこも樹木の根っこを通じて、光合成で作られた糖分などを得ています。
外生菌根性樹木の代表的なものが、マツ科やブナ科。そして小笠原諸島にはどちらも自生しません。ただし、100年以上前に燃料などのために、沖縄地方から「リュウキュウマツ」という松が移植されました。そしてリュウキュウマツの根に共生していたきのこ(の菌糸)がいっしょに持ち込まれた、というわけです。今回紹介した3種はいずれも、沖縄地方を起源とする国内外来種(移入種)ということになります。
これらのきのこが、もともと存在していたきのこをはじめとする生態系にどのような影響を与えているのかはわかりません。ただし、リュウキュウマツも小笠原諸島にとっては外来種。今はもともとの自然状態を取り戻すために、マツの駆除も行われつつあります。マツと共生するきのこ達を小笠原諸島で見ることができるのも、残りあとわずかかもしれません。
そして最後にもう一種。
これは「ニオウシメジ」というきのこで、熱帯・亜熱帯地域を中心に広く知られていますが、最近は関東地方にも毎年生えます。大きく成長すると、一株で50キロ以上の重さになる、超大型のきのこです。このきのこが昔から小笠原に分布していたのか、これまた最近の持ち込みなのか、は不明です。でも何年間も続けて小笠原諸島で調査をしてきたのに、今回初めて見つけることができました。
「きのコン」締め切りまであと1週間ほどです。みなさまどしどしご応募ください!