2017/8/15(火)
ミャンマー調査のつづき
皆さんこんにちは。きのこ展担当の保坂です。
きのこ画コンテスト(きのコン)の応募締め切りまであと3週間足らずとなりました。植物園では水草展の真っ最中ですが、きのこ展のポスターといっしょに、きのコンの応募用紙も置かれています。応募用紙は植物園の受付にもありますので、ぜひみなさま積極的にご応募ください。
今回は、今年5月に行ったミャンマーでの調査の様子を引き続き紹介します。
成田空港で手続きした大量の調査道具は、無事に現地に到着しました。でもここからが大変です。なにしろ離れ島のランピ島に行くためには、小さな船に乗らなくてはなりません。小さな船着き場で荷物を積み込みますが、荷物だけで一艘が満杯になりました。
我々が乗る船も決して大きいものではありません。小さなスクリューの付いた船が、出力を最大限にして進んでいきます。
ランピ島周辺にはモーケン族と呼ばれる人々が暮らしています。もともとは一生を海の上で暮らす、まさに海洋民族。最近は国の政策によって、陸地でも暮らさざるを得ないようですが、それでも主な活躍の場は海の上です。調査中も不安定にしか見えない小さな船の上に立って乗り、前向きにオールをこぐ姿を何回も見ることができました。
でもやっぱりきのこ調査の中心は陸の上。目についたのは大型のイグチ属や、
やはり大型のニガイグチ属のきのこ達。
でもこれらはアカシアの木の下に生えていました。Acacia mangiumやAcacia auriculiformisなどの樹木です。実はこれらはミャンマーに自然分布する樹木ではありません。おそらく自生地のオーストラリアあたりから植林されて、それといっしょにきのこも移動してきたのでしょう。つまりきのこの移入種、ということになります。
もちろん移入種ではない(と思われる)きのこもたくさん採集することができました。たくさん採れたのは、落ち葉や倒木に密集して生えるチャダイゴケの仲間。見た目は日本にも生えるスジチャダイゴケそっくりです。でも熱帯を中心に多くの新種が発表されているグループなので、ミャンマー産の個体も新種かもしれません。
今回はいろいろな専門分野の研究者と合同で調査をしたので、調査方法の違いを見るのも面白かったです。例えば、植物チームは暇さえあれば、まだ調査中の山の中で標本を作り始めます。熱帯雨林の中で押し葉標本(腊葉標本)を作るのです!
そして彼らは宿に戻っても、ゲストハウスの前にゴザと植物を壮大に広げて、植物を押しまくるのです。
一方で、藻類チームは宿に戻ったらインドア派です。寝室の一角に即席の「研究室」を作って、苦労して持ち込んだ顕微鏡を設置します。ここで採取してきた海水中にいるプランクトンの種類を判別するのです。
そしてきのこはと言うと...
藻類研究室の後ろの床に座り込み、採ってきたきのこを並べて、ひたすら写真撮影とDNA用のサンプル処理をしました。海外では一人でやることも多いこの作業ですが、今回は現地の菌類専門のスタッフが同行してくれたので、かなり効率的に仕事を進めることができました。
さて、いよいよきのこ展開幕まであと1か月ちょっと。どんな漫画・絵本を展示するの?という声もちらほら聞こえてきます。残念ながら、まだまだ書籍のリストを明かすことはできません。でも、もう少し開幕が近づいて来たら少し種明かしをしようかと思っています。お楽しみに!