筑波実験植物園

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こんにちは植物園です

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12月28日(水) 今年、筑波実験植物園・植物研究部が日本植物園協会の「保全・栽培技術賞」を受賞しました!
屋外栽培班の二階堂です。

今年の5月17日に開催されました公益社団法人日本植物園協会第57回大会にて、筑波実験植物園・植物研究部が日本植物園協会の「保全・栽培技術賞」を受賞しました。国立科学博物館HPの研究室コラム2022年4・5・6月 5月5日でも紹介されましたがこの場でもご紹介します。
業績の対象は「クマヤ ブソテツの胞子からの繁殖と順化(和知 恵子、堤千絵、中島香澄、山田佳子、小林弘美、 二階堂太郎、平山裕美子、松本定、海老原淳)日本植物園協会誌第55: 108-111」です。当日は圃場の和知さんが表彰式へ出席しました。この事例報告は日本植物園協会HPでご覧になれます。

翌日18日のオンライン研究発表会では圃場班の筒井さんが「筑波実験植物園におけるナラ枯れの集中加害木の発生予察と防除対策について」を発表し、圃場の渡邉さんが「希少水生植物の栽培保全:最近の成果と課題」、木さんが「筑波実験植物園におけるカンアオイの根腐れ原因の調査と健全育成について」をポスター発表しました。

当園は保全に関する様々な業務を行っており、この度の報告はほんの一部。栽培現場での仕事に追われて、発表するための時間を確保しにくいのが悩みです。

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12月23日(金) 屋外栽培員3名と圃場栽培員1名を募集しています。
屋外班の二階堂です。

私の所属する屋外班では屋外栽培員3名と圃場栽培員1名を募集しています。現場にいる立場から、実際の仕事内容をご紹介します。
なお、正式な募集職名は労務補佐員(短時間勤務有期雇用職員)です。国立科学博物館が出している採用情報はこちら。
屋外栽培員
圃場栽培員


1.屋外栽培員(週30時間勤務)
植物の細かい手入れ以外で労力が掛かる仕事を説明します。

@刈り払い機による除草が、植物園管理で一番大変。
ナイロンコードによる刈り払いが8〜9割、チップソーはそんなに使用しません。広い園地を維持するために、炎天下でも、少しの雨でも、現場に出て刈っています。

A園路掃除を日々行っています。
背負いブロアーで落ち葉を吹き飛ばし、集め、回収します。台風後の掃除は時に数日かかる事もあります。

B修繕や工作仕事
垂木やベニヤ板を切断して展示台や解説板などを日常的に作っています。先日は東屋の庇と屋根の穴を修繕しました。今日は水槽の中へマングローブ苗木を置く為に、エキスパンドメタルを切断加工しています。

2.圃場栽培員(週18時間勤務)
@植物の調子観察、灌水、場所移動
朝一番の仕事は灌水です。そこで植物の調子を見て、その場所の栽培が適しているか、土は劣化していないか、肥料は不足していないか、病虫害にかかっていないかを観察します。

A植替え
圃場の植物栽培は基本的に鉢で行っています。植替えが日々の基本業務です。

B挿し木、播種
研究員が入手してくる植物は根があるものばかりでなく、枝や種子の場合も多いです。それらから個体へ成長させる必要があります。

3.共通
@伐採木や剪定枝の回収運搬と掃除。
廃材を圃場にあるストックヤードへ運びます。木材系の廃材は重くてかさ張り、対して運搬車の荷台がそれほど大きくないので、時に何度も往復します。

A廃材処理
回収された除草ゴミはバックホーで攪拌し発酵させて体積を減らします。枝ゴミはチッパーにかけます。夏場の作業は枝運びがなかなかきつく、多くの人数で作業するようにしています。また、冬仕事でチップ類を園内に出します。

B企画展の設営と撤収
年に大小7回程度企画展が行われます。その会場で使用する展示ボードやテーブルを運び、屋外テントを設営します。植物栽培作業と並行するので、企画展と企画展の間隔が短い時はかなり忙しくなります。

4.その他
@屋外栽培班と圃場栽培班の2つを合わせて屋外班です。屋外栽培員が圃場業務を補佐したり、圃場栽培員が屋外作業を補助したりと、それぞれ共同で仕事をしています。

A資格の有無は条件ではありませんが、バックホーとチェーンソーの有資格者がとても少ないので、資格を持った方が活躍されています。

B屋外も圃場も現在勤務されている栽培員のほとんどの方は、前職は植物栽培以外の仕事をされていました。自然が好き、植物に関わりたい、屋外での仕事が好き、そんな気持ちが皆の共通点です。

最後に
7人の研究員の指示のもと、植物園を維持管理し、また、研究や保全のために持ち込まれる植物を栽培する大変アカデミックでやりがいのある職場です。フラワーパークのような派手さはありませんが、7000種もの植物に囲まれて、私にとってはアミューズメントパークの様な環境です。
 過去のブログにて実際の作業や各作業員が使っている道具類の紹介を書いています。
植物園栽培班の冬仕事
腰道具シリーズD
腰道具シリーズB
ぜひこちらも参考にしてください。
 

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12月23日(金) 植物園栽培班の冬仕事2
屋外栽培班の二階堂です。

冬場仕事紹介の2回目です。一回目はこちら
この時期は設備の修繕や工作仕事が目白押し。(小鳥のメジロは同じ枝にギュウギュウ押し合って並びます。本当。)

1. 東屋屋根の修繕
老朽化によりあちこちで穴が開いています。動物の住処となったり、スズメバチが巣を作ったりするので、応急処置を施しました。まずは庇の裏側にジャストサイズのベニヤ板を切り出してトンテンカン。それから屋根もベニヤ板で塞いで上からビニールシートをペタリ。押さえには細長い枕土嚢を使用。白だと違和感が強いと思って黒ビニールで巻いたところ、それはそれで何とも言いようのないティストが誕生。

2. コウヤマキ土留め丸太の交換。
大きい樹の植栽では太さ10p程度の長い丸太を支柱材に使用し、樹が根を張ったら撤去します。ずっと以前に園内各所から回収した長木が沢山あったので、長さ20pに切断し、コウヤマキ土留め丸太に利用しました。この土留めを設けたのは10年以上前で、最初の丸太がこれまでずっと土を抑えてくれました。感謝一杯。しかし新品の仕上がりを見たら、もっと早くに交換すればよかったと反省。

当園は植物の管理に加えて、さまざまな工作も自前で行っています。これらの制作は私ではなく、栽培班作業員のみなさん。時に作業場はまるで工務店のよう。バックヤードの沢山の貴重な植物の横で、丸鋸と高速カッターの切断音が響き、時々溶接機の火花が飛びます。この栽培と工作の一体が筑波実験植物園の強みです。

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12月20日(火) 冬に咲く花
こんにちは、登録室のTです。早いもので今年も残すところ10日となりました。強い寒気がやってきているため、この先も厳しい冷え込みが続きそうです。

でも、そんな寒さにも負けず咲く花もあります。黄色い蕾をたくさんつけていたソシンロウバイ(※1)が、先週末からぽつりぽつりと咲き始め、ほのかにいい香りが漂っています。もっと身近なところでは、ツワブキ、ヤツデ、サザンカなども冬に咲く花ですね。「こんな寒い季節に咲いて大丈夫なの?」と思うのは人間の余計なお世話。自然界では、冬に咲く花は貴重な蜜源で、昆虫や鳥には人気のようです。

冬に咲くもうひとつの花、それはシモバシラの根元に咲く「氷の花(※2)」です。霜柱(氷柱)ができるメカニズムはこうです。地上で茎は枯れたように見えても、根は土中の水分を吸い上げていて、 外気温が氷点下になると茎の中(道管内)の水分が凍り、茎を突き破って外へ飛び出します。寒さが増すごとに根元に氷の層が重なり、茎を覆うようになります。だからといって寒い季節に必ず見られるわけではないし、日が当たるとすぐに溶けてしまいますので、出会えたらラッキーです。12月19日(月)つくば市の早朝の気温は-2℃、運よく「氷の花」を見ることできました。

さて、最後に確認です。筑波実験植物園の年内開園は12月27日(火)まで(12/26は休園)、年明けは1月5日(木)からとなります。

(※1)ソシンロウバイは、「kahaku event12-1月号」の表紙を飾っています。
(※2)「氷の花」は、シモバシラ(W10エリア)のほか、ツクシミカエリソウやテンニンソウ(いずれもW9エリア)にもできることがあります。

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12月15日(木) 植物園栽培班の冬仕事
屋外栽培班の二階堂です。

秋も終わってもう冬の季節がやってきました。
多くの植物達が眠る季節に植物園栽培班はどんな仕事を行っているか何回かに分けて紹介します。まずは1回目。

1.落ち葉掃除。
園路や地面を覆う落ち葉はとても美しいのでそのままにしておきたいのが本音です。しかし舗装された園路ですと、その落ち葉で滑りやすくなる事があります。また、砂利を敷いた広場の場合は、落ち葉が土の養分となってしまうと翌春以降の雑草が旺盛になってしまいます。そのため、11月〜12月はブロアー清掃で大忙し。
ちなみに清掃直後の強風で清掃前と同じ景色になった時、短い笑いが体の深い所からこぼれ出てきます。ブロアーエンジンの調子が悪くて、スターターを何度引いても掛からない時も同じ症状が出ます。

2.ウッドチップや腐葉土などを園内へ運搬
剪定枝や除草ゴミや落ち葉をストックしておく場所が圃場にあるのですが、とても狭く、春からため込んだそれらを園内に出さないと来春からストックができません。そこで、木質廃材はウッドチップにし、除草ゴミや落ち葉は分解を促進させ、それぞれ体積を小さくしてから園内各所へ運搬車で運び出します。今年はチップの一部を冷温帯の小園路に敷いてみました。腐葉土はカキコーナーへこれから運んで肥料になってもらいます。
ちなみに運搬車はガソリンエンジンが運転シートの真下にあり、ピストンの爆発振動が運転者へ直撃です。私が運転するとき、その躍動感によってか、銀河鉄道999映画版テーマソング(ゴダイゴのあれ)が頭の中を流れます。結構楽しい気分になります。それとたまにスカイ・ハイも(ミル・マスカラスのあれ)。

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12月13日(火) 腰道具シリーズF ★各栽培員が使っている腰道具類を不定期で紹介します★
こんにちは。栽培班のここです。

これまで他のスタッフが色々な腰道具を紹介してきました。
今回は、ピンセットやハサミとは違う私の必需品をご紹介しつつ、私達栽培員の日々の作業についてもちょっぴりご紹介いたします。

まず紹介する私の必需品は、スマートフォン(スマホ)です!
植物の記録写真を撮ったり調べ物をしたり、その場でぱぱっとできるスマホは私の必須アイテムです。
そして私達栽培員に欠かせない、ある事を調べる為にも使用します。

それは天気予報!

栽培員は毎日、必ず天気予報を調べています。
次は、天気予報から始まると言っても過言ではない!(?)私達の日々の作業についてご紹介します。

朝一番に天気予報を調べ、時間ごとの天気、気温、風速などを確認し、それを参考にその日の水やりや作業内容を決めています。
また、予報は時間で変わる事もあるので、朝だけでなくお昼や夕方にも確認。予報を見て夕方の水やり、各温室の温度設定やドアの開閉などを決めます。
風が強い予報の時には、鉢が倒れて枝葉が折れないよう、鉢同士を寄せ合ったり支柱に縛り付けたり、あえてあらかじめ横にしたり。
さらにその日の天気だけでなく、何日も先の予報も確認しています。
天気予報を見て今後の作業を決め、逆算して今日の作業は・・・と考えることも。

植物の置き場所も種類や状態、季節によって変わります。その作業も天気予報を参考に植物を見ながら、時には他の栽培員と相談しながら行っています。

栽培と聞くと、水やりや植替えを想像する方も多いかと思いますが、こんな風に日々お天気を気にしながら作業をしている事も知っていただけたら嬉しいです。

最近は朝晩の気温がぐっと下がってきて、どんどん本格的な冬が近付いてきていますね。
さて、今日から一週間、どんなお天気になるのでしょう?

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12月9日(金) 腰道具シリーズE ★各栽培員が使っている腰道具類を不定期で紹介します★
圃場スタッフのよっしーです。

水草栽培で使用する重要な装備の一部を紹介します!
※水草栽培道具1回目はこちら:2022年11月14日(月)ブログ

水草の管理において、ガラス越しに水槽の中身が見える¥態であることは水槽内全体の状態を確認する為にとても重要です。
金魚や熱帯魚を飼育した経験のある方は分かると思いますが、ガラス面に発生する藻類は水槽内の景観を損ねるだけでなく、水草を覆い成長を阻害するなど、水槽を管理する以上藻類との戦いは避けては通れません。
そんな藻類を除去するために使用している道具は、これらのスクレーパー達です。使い方は、ガラス面の汚れを削ぐように使用します。

@Flex scraper/プラスチック製、見た目は文房具の定規のようですよね!
使用目的も藻類や汚れを取る専用に販売されているだけあり、手が疲れにくく使い心地も良いです。使用の際は、砂や砂利を挟んでしまうとスクレイパー自体が摩耗し、除去範囲にムラが生じてしまうので、砂地との境目を掃除する際は注意が必要です!こちらは観賞魚専門店や通販で購入できます。

A壁紙貼り用スクレーパー/プラスチック製で、壁紙貼り用ということもあり、持ち手は握りやすい形状になっています。刃先が金属製の物も販売されており、丈夫で使い易いのは確かなのですが、それらは刃先が鋭利で、表面そのものが傷付きやすいアクリル製の水槽や水槽のガラス同士を接着しているシリコン部分(指をさしている画像のところ)を傷つけてしまう為、私はプラ製の物を使用してます。値段も¥200程とリーズナブル!ホームセンターの壁紙コーナーや、補修資材コーナー等で入手可能です。

B、Cコーキング用ヘラ/プラスチック製、ホームセンターのペイントや補修資材コーナー等で入手可能です。コーキング剤を塗ったり、伸ばしたりする為のヘラです。使用場面としては、水草が密植しており、大きなスクレイパーでは作業し辛い細かい場所等で使用します。

ここで紹介したスクレイパーはごく一部です。使用するものは何も水槽専用の物でなくて大丈夫です。分度器や三角定規等、スクレイパーになり得る物はたくさんあります。ホームセンター、画材屋、プラモデル屋、100均等々、様々な場所で自分の手にあった物を見つけてみるのも楽しいですよ!

今回はスクレイパーについて紹介しました。次回も水草栽培関連のメンテナンス道具を紹介したいと思います。

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12月6日(火) バックヤードでは蘭展にお目見えするランたちの鼓動が聞こえてきています
こんにちは、ラン科栽培担当の鈴木です。

つくば蘭展は2023年1/22(日)〜1/29(日)開催です。
各種ランの花芽が見え始め、準備も佳境に入ってきました。
たくさんの花を見ていただきたいので、いまは開花調整も頑張っています。
早く咲きそうなランは涼しい温室に移動して、開花が遅れそうなランは暖かい温室に移動します。蕾の状態を見ながらの温室移動は、経験と勘が頼りのアナログ作業です。
潅水も注意が必要になります。長く伸びている花茎は、上から水をかけてしまうと曲がってしまいますし、夜間まで蕾や花に水滴が残ってしまうと花が傷んでしまいます。
また、病害虫にも注意をしています。
今年の蘭展もときめく時間をお届けしたいと思っています!

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12月1日(木) 紅葉シーズン、まもなく終了
こんにちは。登録室のTです。暖かかった11月から一転、12月に入ったとたんに、日本列島は冬本番の寒気に包まれたようです。

近年の温暖化のせいでしょうか、園内の樹々の紅(黄)葉のハイシーズンが、年々遅くなってきているように思います。また夏の猛暑のためか、紅葉の前に傷んだ葉を落としてしまう木々も見られました。

そんな中、プロムナードのメタセコイアは夕日に染まったような濃いオレンジ色となりました。常緑のセコイアとの美しいコントラスト風景は、もう少しで見納めです。ドウダンツツジやイロハモミジの燃えるような赤、ブナやフウの黄色、今年の紅葉シーズンはまもなく終わりを告げます。お見逃しなく。

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