なぜ失われつつある生物を保全する必要があるのでしょうか?
生物はそれぞれが相互に作用しあって生態系が形作られています。そのため、個々の生物の絶滅は生態系の崩壊につながり、それはやがて人間生活の崩壊へとつながる可能性があります。実際に、この20世紀後半から人間活動が原因で始まった生物多様性の危機は、このまま対策をしなければ、地球の歴史上で第6回目の生物大量絶滅に向かうと推測されているのです。さらに、多様な生物には人類にとって有益な成分や特性が隠れています。これが確認される前に絶滅してしまえば、貴重な財産をみすみす失うことになるのです。
その中で、筑波実験植物園は、生きた植物にこだわって、植物多様性を守ります。なぜなら、生きた植物だけが、生態系を形づくり、生きた植物こそが利用可能な資源としての価値を持ち、そして、生きた植物を保存できるのは植物園をおいて他に無いからです。
これまで筑波実験植物園では、日本を中心としたアジアの野生植物の保存に取り組んできました。特に、絶滅のおそれのある種については最重要課題として強力に進めており、日本の絶滅危惧種2155種のうち555種(2014年3月時点)を栽培保存しています。
保存植物が生態系の再生に利用される時のために、保存個体の来歴などの確実な記録とともに、遺伝的、生態的特性の研究から、保存や再生に必要なデータを蓄積しています。さらに、保存個体から野生の集団を実際に再生するパイロットケースとして、野生絶滅種の野生復帰に取り組んでいます。