植物の学習は、視覚をもちいた観察・観賞体験がほとんどですが、27万もの種類がしられる陸上植物の中には、ふわふわ、ざらざら、柔らかい、硬いなど感触が面白い植物(触覚)、ハーブや、良い香りや悪臭を放つ花など、香りの強い植物(臭覚)、食べられる植物(味覚)、楽器などに使われる植物(聴覚)など、五感で直感的に楽しめる植物が数多く存在します。そのような植物素材を活用した体験学習は、植物に親しみながら楽しく学べるだけでなく、感覚を研ぎすましたり、さまざまな植物があり、それらを利用して私たちの暮らしが成り立っていることを、実体験を通じて学ぶことができます。本授業では、なかなか植物園に来園しにくい生徒を対象に、植物園で栽培している鉢植え植物を持参して、学校に出向いて体験学習を行う出前授業を実施しました。
植物は、さわって楽しむ、匂いを楽しむ、見て驚くなど、五感それぞれで楽しめる植物を40種ほど選び、その鉢植えを準備しました(五感で楽しむ植物についてのページを参照)。それぞれの学年や発達段階に応じて、観察する植物と生活を関連づけたクイズを導入したり、五感を使うことに重点をおくなど、教員と相談しながら適宜内容をかえて実施しました。
実際の授業では、生徒たちが各グループをまわり、楽しそうに活動する様子が見られました。積極的に手に取って体験する生徒、先生に促されて手に取る生徒など、反応は生徒やグループによってさまざまでしたが、いずれかのコーナーで反応する様子が見られました。
授業後の教員向けアンケートでは、五感を使って生徒が楽しみながら学べて大変よかったという声が数多くあげられました。植物の利用法について学ぶことができたとの回答も得られ、ねらいは達成できたようです。小学部でも中学部でも同様のアンケート結果が得られたことから、発達段階や成長が異なっていても、楽しみながら学習できたようです。また、学校ではできない授業が実施できたといった内容の意見も寄せられました。中でも、周辺地域の屋外では植栽困難なバナナや熱帯の植物など、普段見られない面白い植物はとくに反応がよかったです。反応が良くなかった植物については、意見が分かれる結果となりましたが、3つのコーナー(さわる、香りや味わう、楽器など暮らしに役立つ)があることで、一部では反応が少なくとも、いずれかのコーナーや植物で楽しめたのではないかと考えられました。
一方で、もう少しゆったりとした時間の中でじっくりとやりたかったなどの反省点もあげられました。授業時間や体験する植物の数については、今後、発達段階などに応じて変更する必要があります。