国立科学博物館筑波実験植物園では植物画コンクールを毎年開催しています。現在、小学生の部、中学生・高校生の部の2部門からなり、それぞれの部門で優秀な作品に対し、文部科学大臣賞、国立科学博物館長賞、筑波実験植物園長賞各1点のほか、佳作(小学生の部10点、中学生・高校生の部10点)、準佳作(小学生の部20点、中学生・高校生の部20点)の各賞が授与されます。
【今後の植物画コンクール募集区分の変更について】
植物画コンクールでは、第40回(令和5年度)から一般の部を廃止し、小学生の部及び中学生・高校生の部の2部門のみでの募集といたします。
植物画コンクールは、昭和59年(1984年)に第1回を開催して以来、今年で第38回を迎えます。第37回までの応募点数は、218,722点を数え、実に多くの方からのご応募をいただきました。入選作品につきましては、毎回、筑波実験植物園、国立科学博物館(上野)及び附属自然教育園で「植物画コンクール入選作品展」として展示し、ご観覧いただくとともに、地方の博物館等の要請により貸出しを行う等、学習支援活動にも活用させていただいております。
現在、国内の「植物画」は、本コンクール開催初期に比べて広く一般に普及し、様々な団体等が普及活動等を行っております。本コンクールの永年にわたる開催は、日本の「植物画」文化の醸成及び牽引に一定の役割を果たしてきたものと思料いたします。
今後の日本には、より一層の自然との共存や保全に対する理解が必要とされ、自然を見る目を早期から養うことが重要です。筑波実験植物園においても、植物画コンクールを通して植物の姿を正しく観察し、植物をより深く理解してもらうとともに、植物に対する愛情と人と植物のつながりへの関心を持つ、次世代の人材を育成していくことが重要と認識しています。そこで、今後は当園の限られたリソースを児童・生徒に特化した植物画コンクールに傾注し、内容の更なる充実を図ることを目指すことといたします。
つきましては、現在の3部門(小学生の部、中学生・高校生の部、一般の部)での募集を第40回(令和5年度)から小学生の部及び中学生・高校生の部の2部門での募集といたします。
現在の3部門での募集は、第39回(令和4年度)までとなりますのでご注意下さい。
何卒、ご理解、ご協力を賜りますようお願い申し上げます。
筑波実験植物園長
令和3年11月1日
第41回植物画コンクール入選者の発表は、令和6年12月下旬頃を予定しております。
※過去の入選作品については、植物画ギャラリーをご参照ください。
さまざまな絵画の中には、植物の描かれているものが数多くあります。絵の背景までも含めると、どこかに植物あるいは植物の一部が描かれているもののほうがむしろ多いかもしれません。しかし、それらがすべて植物画と呼ばれているわけではありません。
野山で植物を観察し、その植物の名前を知ろうとする時、花の色や形、花びらやがく片の数、さらには葉の形やつき方をもとにその植物が何であるかを決めるでしょう。それは世界中に23万種以上あるといわれている花の咲く植物、すなわち顕花植物はそれぞれにこれらの花や葉の形や数が決まっていて、それによって区別できるからなのです。花は咲きませんが、コケやシダ、キノコなどについてもその形は植物によって決まっています。
植物画では、その絵を見て、その植物が何であるのか、確実にわかることができなければなりません。例えば、カエデの仲間を描こうとすれば、葉の形こそ、掌状から三小葉、単葉まで種類によってまちまちですが、花は放射総称(点対称)であり、花びらとがく片は離弁、雄しべは8本、雌しべは1本で、子房(果実になる部分)はがく片の付け根より上にあり(子房上位)、そして果実には2枚の翼があることではどの種でもたいてい共通ですから、そのように描かなければなりません。その植物の特徴となる花の部分がぼやけて描かれていたり、たとえ描かれていてもその特徴が本来の植物と異なっていては植物画とはいえないのです。植物画では、このようなそれぞれの植物の特徴を正確に表現することが必要なのです。もちろん、その芸術性についても追求しなくてはなりませんから、植物画はその正確性と芸術性を兼ね備えた絵画といえるでしょう。